アメリカ経済はどうなる?
アメリカの連邦債務上限問題や米国債格下げなど、世間を賑わしたトピックスが収束した後も、ドル安(円高)や世界株価急落といった金融市場の混乱は収まる様子がない。今回は、この問題の周辺を考えてみたい。
為替相場では、ドル安トレンドは、昨年7月以降、ほぼ休みなく続いていて、決して最近のものではない。イングランド銀行が発表しているドルの名目実効為替レートを月次平均で見ると、若干下落(ドル安)に歯止めが掛かったのは昨年2010月の2月だけで、後はひたすらドルの他通貨に対する価値が低下している。欧州連合(EU)も金融システム不安を抱えているため、時にドル安よりも欧州通貨安の色彩が強くなることがあるが、いずれの場合でも日本円やスイス・フランのよすな「強通貨」の常連が、待避的に買われるというパターンになっている。

事実として米債は買われている
そもそも、米国債のデフォルト(債務不履行)が本当に危惧されたなら、米国債がかくも買われてきたのはおかしい。ドル金利は下落し、米日金利差は縮小傾向になり、金利裁定上、円を売ってドルを買う限界的意欲は生じないことになる
ので、円高・ドル安はなかなか覆されない。FXをしているfx投資家も円売りに期待している。
このように整理すると、ドル安の真因はアメリカ経済に対する不信感ないしはリスク認識と解釈する方がよいだろう。そうすれば、昨夏からのドル安が米景気悲観論台頭のタイミングと合っていることや、QE2(量的緩和第2弾)決定の時期に少しだけドル安が和らいだこと、米国債が売られず金利が低いままになっていることの説明がすべて付く。
しかし、筆者はここで別の悩みに行き当たる。確かにアメリカ経済は無傷ではないが、そんなに悪いとは思えないからだ。アメリカの景気動向指数に採用されている21の主要経済指標を合成して景気循環を見るバスケットCIでは、7月分を含め、景気循環に何かゆゆしきことが起こっている形跡はない。
それどころか、株価さえ下かっていなければ、誰も米国経済危機説を言い出すはずのない、好調な展開である。これは特定の都合の良いデータを持ち出した結果ではなく、逆に労働時間、受注、出荷、鉱工業生産、雇用、対企業貸し付け、マネーサプライなどの極めて広範な実数統計を合成したものであるから、反論しようのない現実である。
もう1つの総合的経済指標であるGDPも、1〜3月期の減速の後、4〜6月期はわずかとはいえ加速している。均してみれば、非常に堅調な成長が続いているのである。これら以上に、正しくアメリカ景気を表現するものはないと言える。こうなると、株価を信奉する悲観論者は個別の指標に向かわざるを得なくなるのだが、その先はまず何よ。りも失業率らしい。確かに以前の水準に下がるまでに時間がかかっているのは事実だが、それは山が高いからであり、改善のペースが過去対比で特に遅いからではない。また、失業率と鏡像的関係にある雇用人口について細目を検討すると、民間の雇用増は十分に速いが、政府が財政緊縮で雇用を削り続けていて、景気が改善しても、失業者が速やかに減らなく力っている実態がはっきりする。
ISM指数はあてにならない
ここから先は経済学の領域ではなく、イデオロギー的に政府の関与を「どこまで」求めるかの国民的判断であると言える。
所詮、2兎を得るという解決法はない。つまり、「失業率を減らせ」という一方で、「財政赤字も減らせ」と詰め寄っている現在の金融市場や保守勢力は、オバマ大統領に相反する課題を突きつけ、選挙の年に向けて攻勢を掛けているだけであるように見える。
不況論や構造改革論が、政局とも密接に結び付いていた日本の経験からすれば驚くべき事態ではないが、経済実勢はともかく、無理難題に対処できず無力感に苛まれる心理構造を持つに至ったアメリカも、そこだけは「日本化」してきたのかもしれない。悲観論者が持ち出すもう1つの根拠は、ISM製造業指数やフィラデルフィア連銀指数のような、企業経営者の見方をアンケート調査した企業サーベイ統計である。
しかし、これらの判断は世論に左右されるため経験的に当てにならない。ISM指数の場合、今回のように1ヵ月で3回以上悪化したケースは1990年以降で9回(好況中の明らかなぶれを除く)あるが、そのうち実際に不況と判明したのは2回きりである。筆者は震災前から世界経済は目先減速すると主張してきたので、金融市場が乱高下すること自体に異論を挟むつもりはない。だが、今ごろそうなるようでは、少し遅すぎる印象がある。新興国では、しばらぐ前から景気の調整が始まっていた。先進国でもその影響が指標の減速に表れていた。
話が純然たるマクロ指標の分析に戻るにつれ、ここからむしろ事態は沈静化していくと筆者は考えている。なぜなら、前述のように先進国の景気はまだ全体としては好調であるうえ、新興国も含めた世界のマネーサプライ(主要17力国合算のマネーサプライ伸び率)は再び加速を見せ始め、新興国景気もそろそろ踊り場を抜け出しそうな案配だからだ。それらを合算した世界景気は、もうこれ以上は悪化しないのではないだろうか。そして、この局面でダウンサイドリスクが最も小さいのは日本である。日本は震災の谷が深ぐ、それを下回るリスクはほぼゼロに抑えられるからである
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最近の為替市場(FX)では、アジアや欧州の株式市場が底堅く推移したことでリスク回避の巻き戻し的な流れが強まり、主要通貨やそのクロス円通貨が底堅い値動きとなって取引を開始した。その後、ドイツで欧州の財政問題を抱える国々への救済が意見であるという訴えを裁判所が退けたことが報じられユーロは急騰する展開となり、この動きに連れてその他の主要通貨も上昇する展開となった。しかし、欧州の金融市場ではギリシャ国債の下落に歯止めがかからず、これが懸念材料として意識されると、ユーロは一旦反落する展開となり、その他の主要通貨やそのクロス円通貨も値を下げる動向となった。